「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」東京国立近代美術館
千利休らが、お茶を飲む、という何気ない日常の行為を、「茶道」という宇宙哲学にまで高めて作り上げた。
そんな16世紀に、千利休が愛した樂家の祖である長次郎という人がいた。その長次郎によって創始され、450年間に渡り技術を継承し続けてきた樂焼という陶芸界の「流れ」がある。
一子相伝のみで継承されてきた樂焼の初代から現在までが展示されている空前絶後の展覧会。 樂家と親戚関係にある本阿弥光悦の作品も含め、その歴代の流れが一望できる。東京国立近代美術館(3月14日~5月21日)で開催されます。
十五代目当主の樂吉左衞門さんは、伝統に甘んじることなく常に前衛に挑まれている。樂焼きの権威に寄り掛かることなく、常に古代の手法だけで、革新と挑戦をし続ける偉大な方。
作品につけられた名前も、詩や散文を読んでいるように生きているように美しい言葉を選ばれて、茶碗を見ているだけで音楽が鳴っているような世界が漂う。
例えば、
「夜起対月 (よるたってつきにたいす)」
という黒樂茶碗がある。なんと美しい表現だろう。
土や砂という日常の自然を高い解像度で観察し、自然に潜む美を発見しながら陶芸として定着させる。茶碗という微小な空間に宇宙的な美を転写する世界。
黒や赤に、この言葉では汲みつくせない、こんなにも無限の広がりがあるものかと、見ていてドキドキする。生で見ると、視覚からも触感までもが強く感じられる。
今回の展覧会は本当にすごかった。
茶碗というその極小の世界に、極限まで抽象化された小宇宙が展開する。本当に素晴らしかった。茶碗の概念が変わる。
最後のフロアには、吉左衞門さんの作品が多数展示されていた。
その挑戦的な曲線や、見たことのない不思議な発色の世界に、別の惑星にいるのではないかというほど魅了された。展示方法やライティングも素晴らしい。
レセプションでは樂吉左衞門さんにもお会いした。3/11のNHKのスイッチも見て頂けて、すごく面白かった!と感想をいただいた。嬉しかった共に気恥ずかしかった。
樂吉左衞門さんは陶芸家の最高峰にいる方ですが、自分のような若手にも、いつも気さくに話しかけてくれます。
お話しする時、ぐっと眼を見て真剣に、一対一の世界で話してくれます。
それは、きっといつも土と対峙している真剣なあり方そのもので、そういう誠実さが、陶芸でのごまかしのなさととして深く表現されていると思うのです。
樂吉左衞門さんの陶芸を生で見たことがない人は、是非一度見てほしいです。
陶芸が分からないとか、茶道が分からないとか、、、一切の理屈は不要で、とにかく見て頂きたい。
器の色合いの無限の深さと、一対一で対峙してほしいです。
黒、赤、青、というものが、こんなにも無限の深さを持ったものかと、うなります。 若い人や、見たことない人こそ、是非見に行ってほしいです!!