時と時の交差点で
当直中は電話で起こされまくるので、深夜テレビを見るのに最適な時間だ。
普段見ないからこそ社会勉強になる。
夜中のテレビショッピングの映像を見ていると、番組の作り方の構造自体に関心が向かう。
人間の心の死角を補いながら欲望を刺激するフォーマットなのかと、別の観点から興味深く思えてならなかった。
当直中に、奥田健次さんの出張カウンセリングのドキュメンタリーを見た。 すごく面白く、かつ勉強になった。
臨床心理士としては破格で破天荒な人だが、実績と経験と深い洞察とがあり、それ以上に自閉症や色んなトラブルを抱えている子供たちへの愛があって、偶然見れてよかった。自分も勇気をもらった。
■“ひらめき”で自閉症と闘う 異端の出張カウンセラー 2017年3月30日(木)01:40~02:40 放送(2017年3月29日(水)25:40~26:40 放送)
NHKの「ドキュメント72時間」はすごくいい番組だ。 以前から注目していた。思わず引きつけられる魔力がある番組。
4月からウィークリー放送5年目に突入するということで、夜中に3つ連続でやっていて、全部見てしまった。
・「香港チョンキンマンション」の44分スペシャルバージョン ・「横浜 オールナイトでとんかつを」 ・「北のどんぶり飯物語」
どれも面白かったなぁ。しみじみと、面白かった。
人間が生きているっていうのは、それだけですごいエネルギーを発しているものだ。 人間の生きる光源や熱源のような深い泉の場所を、カメラがちゃんととらえている。NHKはさすがにいい仕事をしていると、深夜にひとりでうなった。
NHKのドキュメント72時間の主役は『場所』。『トポス』が主役。 場所は人を吸引する磁場がある。
「横浜 オールナイトでとんかつを」のナレーションを、市川実日子さんがしてたのにも、驚いた! 実日子さんの素直なナレーションがいい味出してた!
次回は「運命の七差路」(4/7 午後10時50分~ 午後11時15分)
=========== 大田区にある、全国でも珍しい“七差路”が舞台。7つの道が集まり、自転車や車、歩行者がひっきりなしに通るこの道路。道の数が多すぎて信号機もつけられないが、自然と人が譲り合うためか不思議と交通事故は少ないという。7つの角には青果店からスナックまで各種の店が建ち並び、早朝から深夜までたくさんの人が通り過ぎていく。大正時代に行われた耕地整理により出現した、その名も“七辻”。分かれ道の先にはどんな人生が?
【語り】市川実日子
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7つの道が交差する「場所(トポス)」を主役にしているのが、素敵だ。
東大の近くにも、そういう多差路があり、じぶんは勝手に「ゼロ次元の丘」と名付けているし、大好きな横尾忠則さんも、「Y字路」という素晴らしいシリーズを描かれている。
すべての出会いも、そうした「交差点」に喩えられる。
全ての出会いは偶然であり必然でもある。 なぜなら、出会いは道と道との交差点のようなものだから。 出会いを偶然と思う時、なぜここでふたつの道が一点に交差したのだろうかと思う。 ただ、道と道とが交差した場所から、後ろを振り返り、それぞれの道を見てみる。 すると、それぞれの道は、果てしなく遠いところから、この交差している一点へ向けて、正確無比な精度で迷いなく伸びてきていることが分かる。それは必然でしかない。 だから、すべての出会いは偶然で、同時に必然。 そういう風に日々思えれば、日常がいかに奇跡の連続かということも分かる。
「運命の七差路」も「Y字路」も、何かそうした不思議な出会いを想起させるから、人は本能的に惹かれるのかもしれない。
当直中に偶然見た夜中のテレビが面白かったのも、そうした時と時の交差点で起こる。