岡本太郎「忘れられた日本―沖縄文化論」(1961年)
岡本太郎の「忘れられた日本―沖縄文化論」(1961年)。
古代の息吹きと霊性とが、岡本太郎の器を介して溢れだす素晴らしい本だ。
1961年当時の本は写真も多いが、文庫版では多くが省略されていて残念だ。
1961年の時点で、既に日本の古層は失われつつあり、その断絶を岡本太郎はうめきのように写真と文章とで刻印している。
ただ、古代の精神性は、形なきものへと消えてゆくからこそ、人間の実存に深く食い込み、意識できないほど一体化していく。
決して永遠に消えていくものではない、ということを、岡本太郎が当時も直観していたと思う。
形なきものは、あとはこちらが読みとれるかどうかの問題になってくる。
そのことを芸術家の視点で的確に捉えている。
ここで示される人間そのものは、なんと力強いことか。
岡本太郎の言葉を借りると、
「人間生命の、ぎりぎりの美しさ。いかなる自然よりもはるかに逞しく、新鮮に、自然である。」
「人間の純粋な生き方というものがどんなに神秘的であるか」