音の響き
EGO-WRAPPIN'の中納良恵さんが、「午後の紅茶」のCMで「一休さん」をカバーしていて、本当に素敵すぎるー!!! 良恵さんのリズム感は本当に天才だ―!!
CMだけだと名前が出てこないのだが、声とビートを聴くと良恵さんの声だと一発でわかる。
声や音にSignature(署名)が刻印されているのはさすがだ。
●「午後の紅茶 ひとやすみ 17春」篇 メイキング
とんちんかんちん一休さんの歌詞を改めて読んでみると、
「好き」 「すきすきすきすきすきすき」 「あいしてる」 「頓知(常識をひっくり返す)」 「度胸」 「気にしない」 「望みは高く」 「あわてない」 「休む」 「こころはやさしく」
こうした単純なことの大切さを高らかに歌い上げていて、さすがに哲学的で深い歌詞だと思う。
===== とんちんかんちん一休さん 作詞:山元護久 作曲:宇野誠一郎
すきすきすきすきすきすき あいしてる すきすきすきすきすきすき いっきゅうさん
とんちはあざやかだよ いっきゅうひん どきょうはまんてんだよ いっきゅうひん いたずらきびしく いっきゅうひん だけどけんかはからっきしだよ さんきゅうひん
アー アー なむさんだ
とんちんかんちん とんちんかんちん きにしない きにしない きにしない きにしない
のぞみはたかく はてしなく わからんちんども とっちめちん とんちんかんちん いっきゅうさん
すきすきすきすきすきすき あいしてる すきすきすきすきすきすき いっきゅうさん いっきゅうさん
あわてない あわてない ひとやすみ ひとやすみ
すきすきすきすきすきすき あいしてる すきすきすきすきすきすき いっきゅうさん
こころはやさしく いっきゅうひん おつむはくりくりだよ いっきゅうひん おめめはかわいく いっきゅうひん だけどかおはざんねんだよ さんきゅうひん
アー アー なむさんだ
とんちんかんちん とんちんかんちん きにしない
きにしない きにしない きにしない
のぞみはとおく かぎりなく わからんちんども とっちめちん とんちんかんちん いっきゅうさん とんちんかんちん とんちんかんちん
きにしない きにしない きにしない きにしない
のぞみはたかく はてしなく わからんちんども とっちめちん とんちんかんちん いっきゅうさん
すきすきすきすきすきすき あいしてる すきすきすきすきすきすき いっきゅうさん いっきゅうさん =====
「一休さん」と言えば、大友良英さんが音楽を制作した「オトナの一休さん」のCDも何度も聞いている。NHKで放映されていた番組の音楽。 マレウレウが出ていたり、板尾創路さんが出ていたり、本当に面白い。 あらゆるものを統合させていく大友ワールドの真骨頂でもある。
中納良恵さんのアレンジ力と自己吸収力のすばらしさで言えば、坂本龍一さん総合監修の「にほんのうた 第四集」に入っている「北風小僧の寒太郎」も素晴らしい。あらためて、唯一無二の歌い手だと思う。
01 細野 晴臣 + 木津 茂理 + 青柳 拓次「村の鍛冶屋」 02 中納 良恵 + ASA-CHANG「北風小僧の寒太郎」 03 ショコラ「冬の星座」 04 イノトモ + ピラニアンズ「小ぎつね」 05 岡林 信康「とうだいもり」 06 中山 うり「たきび」 07 元 ちとせ「冬景色」 08 小林 翔 + 栗原 務「冬の夜」 09 嶺川 貴子 + rei harakami「ペチカ」 10 Saigenji「雪」 11 手嶌 葵 + 坂本 龍一「雪の降るまちを」
●北風小僧の寒太郎 - 中納良恵 + ASA-CHANG
EGO-WRAPPIN'は、ボーカルの中納良恵さん(作詞作曲もする)と、ギターの森雅樹さん(作曲もする)で構成される二人のグループ。そこにTHE GOSSIP OF JAXXのフルバンドも率いて演奏される様は、LIVEでいつも圧巻のパフォーマンスだ。
EGO-WRAPPIN'の楽曲は、昔の曲を聴いてもまったく懐メロにならず、常に新鮮さをもって聞くことができる。 音の厚みに対して、聞くたびに新しい音や響きを再発見している。
<参考>
〇「鼓膜の記憶 Groove 2」clammbon / EGO-WRAPPIN'(2017-01-23) 〇EGO-WRAPPIN’ memorial live @ 日本武道館(2016-11-28) 〇エゴラッピン 日比谷野音LIVEと20周年(2016-07-12) 〇EGO-WRAPPIN'「Midnight Dejavu」 @ 東京キネマ倶楽部(2016-12-22)
(どれも過去のブログ「吾」に飛びます)
自分は、Arthur Russell(アーサー・ラッセル、1951-1992: アメリカ)の音楽や、Juana Molina(ファナ・モリーナ、1961-: アルゼンチン)の音楽が好きだ。 音楽と言うよりも、音楽以前の領域を扱っているから好きなのだと思う。 二人とも「音響派」と言われることがある。 音の構成や意味ではなく、音の響きや波動を大切にしているという意味だろう。
EGO-WRAPPIN'の中納良恵さんも、20周年記念本(「EGO20 EGO-WRAPPIN' 1996-2016」)に二人の音楽が好きだと書いていたし、EGO-WRAPPIN'の二人はJuana Molinaと日本のLiveで共演している!! 誰とでも自由にセッションできる融通無碍さが、本当にすごい。
Arthur Russellや、Juana Molinaは、意味が立ち現れる前のカオスのゆらぎや振動の世界を音で掬い取っていると感じる。そこは意味ではない場所。感じるしかない領域。
■ 日本語は、「あい」「あお」のような母音だけの言葉が多く、言葉の構成が単純なので同音異義語が多発する。
では、「あい」という言葉の中に無数にある「あい(愛、合、相、藍、逢い、哀・・・)」をどういう風にして聞き分けているのか。 わたしたちは、「音響」で意味の違いを聞き分けているのだ。
そこにはノイズと言われる非整数次倍音が重要な役割を果たす。
ノイズのような音響の中にこそ、意味を支える響きがあり、日本語や日本の楽器は大切にしていた歴史的な背景がある。 それは、自然の音や虫や生き物の音を、ノイズとしてではなく意味のある響きとして聞き取ってきた文化でもある。それは風土や歴史と分かちがたいものだ。
母音だけで意味が通じるのは日本語とポリネシアの言葉くらいだから、日本語を扱う人たちは、元々そうした「音響」への耳が開かれている。
だからこそ、武満徹さんという偉大な作曲家も生まれた。
Arthur Russellや、Juana Molinaや、EGO-WRAPPIN'の音楽や音響の全体性が持つ魔術的な音の深さをも、理解する母体となっていると、思う。
音は、そうして深い無意識と表面の意識とのレイヤーに橋をかけて、交流や化学反応を起こす触媒となるのだ。
●Arthur Russell - Calling Out Of Context [Full Album]
●Juana Molina - Quien [HD]
●Juana Molina - Full Performance (Live on KEXP)