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「子午線の祀り」@世田谷パブリックシアター

世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演「子午線の祀り」プレビュー初日を見てきた。 なんとしても見たかった上演。

予想を超えて、圧倒的な演劇体験。素晴らしかった。

現代演劇史に残るような名演、超大作でした。

なんと、衝撃の上映4時間!!(途中で20分休憩含む)。

去年のMANSAI解体新書の時に萬斎さんがこの公演にかける意気込みを話されていたが、自分も1年越しに楽しみにしていた。

こうして4時間という壮大な作品としてみると、その圧倒的な物語と戯曲の力に身も心ももっていかれた!会場の拍手もなりやまなかった!

当時の日本を二分した平氏と源氏の戦い。天皇や三種の神器までも巻き込んでいる。今考えてもとんでもない内乱だ。多くの人が死んだだろうし、武士だけではなく、様々な一般人も巻き添えを食っていると思う。

能でも、平家物語は大きな鎮魂のテーマになっている。

平家への鎮魂を、こうして日本の芸能があらゆる形で引き継いでいるというのは、まさに文化や芸術の力だ。

萬斎さんの平知盛役と、同じく主役を張る源義経役の成河さんも素晴らしい熱演だった!!!(わたしは慎吾の舞台でも成河さんが素晴らしい演技で記憶に残る)。

成河(ソンハ)さんの義経は、狂気がかった戦いの神がかった演技がすごかった。源氏側の義経自体も、本当に運命に翻弄された人でもあり、あらゆる文学作品の主題になっている人だ。

「義経の気持ひたすらにたかぶるところ、それはただ戦さ場だ。

神(しん)もっとも澄んで総てのこと瞬時に見え、働けばかたきを倒し進めば道は通じ、わが命充ちわたって華やかに開くところ、それはただ戦さ場のみだ。」

【第2幕 義経】

他にも、四国の豪族・阿波民部重能を演じる村田雄浩さんは、平氏や安徳天皇の命運を握る影の実力者だったが、その熱演も見事だった。

 

この4時間にも及ぶ壮大な戯曲は、「群読」というスタイルで語りを集団で重ねながらストーリーを運んでいく。 そうした一人一人人の声の力や、重なった声の力には、終始圧倒されつづけた! マイクやスピーカーがなかった時代は、いかに自分の声を確実に遠くへと貫き染みとおるように伝えるかが、役者の大きな課題だっただろう。

舞台空間を、奥行きも含めて3次元に動かしながら展開されていく舞台構成も見事だった。これは、おそらく萬斎さんの演出だろう。萬斎さんはなんて天才なんだ!!!!

1979年初演の古典とも言える歴史的な作品だから、萬斎さんが現代風に絶妙な味付けをして、現代にフィットするようにしてくれているのだろうと思う。

1979年の初演時は、萬斎さんの師匠である父でもある野村万作さんが義経役をしている。萬斎さんは当時13歳の少年であり、演劇の原体験ともなっているのが、この木下順二さん原作の『子午線の祀り』だとのことで、そこにも運命の力を感じる。

「非情にめぐって行く天ゆえにこそわたくしどもたまゆらの人間たち、きらめく星を見つめて思いを深めることも、みずから慰め、力づけ、生きる命の重さを知ることもできるのではございませんか。」

【第3幕 影身】

長い台詞も流れるようで、役者魂を随所に感じるものだった。

4時間という長時間で体験したことで、改めて平家物語や源平合戦という日本の歴史を、より深く体の中に染み込んダ様な気がした。

古語で語りが続くが、その語りがまた素晴らしい。眼をつむっていても、物語が自分の中に入ってくるような音楽的な語り。

中国の方位で真北を「子(ね)」、真南を「午(うま)」と呼ぶため、子午線とは「子」と「午」の方角、つまり真北と真南を結んだ線のことを指す。 地球を貫く子午線という宇宙的な視点から、源平の合戦を見つめていることを示唆する。

「あの北斗の剣先は、万劫の過去から尽未来際(じんみらいさい)、十二の干支を順々に、狂うことなく尾差しながらめぐっている-そうおっしゃったのは、新中納言さま御自身ではございませんか。」

【第3幕 影身】

運命と呼ばれるような、おのずからの力。 そうしたおのずからの力に翻弄される人間。 人類の争いを天の視点から観察する定点が、タイトルには込められている。 善悪の彼岸にある場所から。

「そして、あの夜空にやがて昇ってくる月の動きと共に息づき続けるこの大海原の吐息が、潮の流れとなって走るとき、人はどうやってそれにあらがえばいいのだ?」

【第1幕 知盛】

 

本当にすごい壮大な舞台だった。 何度も何度も手が痛くなるほど拍手をし続けた。

日本でのオペラのようなものだろう。武満徹さんの音楽もすごかった。

当日券も出るみたいなので、是非行ってみてください!! 4時間、意外にあっという間です!!!

「われらたまゆらの人間が、永遠なるものと思いを交わしてまぐあいを遂げ得る、それが唯一の時なのだな、影身よ。」

【第3幕 知盛】

ここに新中納言知盛の卿、

「見るべき程の事は見つ。今は自害せん」

とて、わが身に鎧二領着て、壇の浦の水底深く入り給う。」

【第4幕 知盛】

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