2017年もお世話になりました。
年末は大学で当直をしています。
2017年はいろんなことがあった。 自分が蒔いていた種の、第一次収穫期のようなものだった。
やはり大きかったのは、2017/3/11:NHK Eテレ SWITCHインタビュー 達人達「大友良英×稲葉俊郎」に出たこと。
出演は迷ったところもあった。
TVに出るということは、自分の仕事柄、それなりにリスクを受けることだから。
大学側も、大学の宣伝ではなく個人として出ることに、いい顔はしない。
ただ、やはり大友さんからのお誘いは光栄であったし、3.11という象徴的な日に自分を指名していただいたことに「おのずから」の力を感じた。
自分は子供のころからテレビや漫画が好きで、テレビ番組からは大きな勇気をもらっていた。
自分が出ることで、一人であっても、誰かの生きる力をよびさますことができるのなら、
それはリスクなどの保身ではなく、自分が受け取ってきたギフトのお返しとして出るべきだろうと思い、出演した。
収穫のようでもありながら、同時に種まきでもあった。
その番組は意外に好評で、 2017/9/4には、大友良英、稲葉俊郎「見えないものに、耳をすます ―音楽と医療の対話」アノニマ・スタジオ という対談本にまで発展した。
SWITCHインタビュー 達人達で書籍化したのは数冊しかないので、これも何か大きな力が働いたとしか思わざるを得ない。
その間に、2017/6/10には息子も生まれた。
誕生日は母方の祖先、名前は父方の祖先を明確に受け継いでいるので、自分は子供を子供として見ていない。自分より経験豊富な祖先が、やり残したことをするために生まれてきたと、考えている。
子供とともにいる時間は、それなりに大変だが、
自分自身もこうして育てられてきたのだ、ということを体験し、
人間が生きているという現象の古い地層に潜むいろいろな重なった愛や思いや祈りのようなものを、身に染みて感じる時期でもあった。
2017/12/22には初の単著となる「いのちを呼びさますもの —ひとのこころとからだ」アノニマ・スタジオを出版できたことも大きかった。
ただの情報であればネットでいくらでも無料で手に入る。情報格差で人の優位に立ったりする時代はもう終わったと思う。
だからこそ、次は情報の質が問われてくる時代になっているし、本も音楽も、モノとしての存在や美しさに戻る時期が来ていると思う。 だから、誰かに贈り物をしたくなるような、部屋の中で凛と存在できるような本を目指し、なんとか美しい作品を、世に送り出すことができた。
ほかにもたくさんの素晴らしい出会いがあり、書ききれない。
2017/5月にヨコハマトリエンナーレ2017に関わらせてもらったのもいい経験だったし、
2017/10/15に、UA + 稲葉俊郎として東京タワーで近代への鎮魂の儀式のような音の祭りをしたのも思い出深い。
年末には「食の鼓動」@青山スパイラルの中で、同時代で最も尊敬する人物の一人である高木正勝さんとご一緒できたのもうれしかった。自分の子供も、最初の音楽体験として正勝さんの音楽をかけたほどだ。ハナレグミやUAや熊谷さんとの昼でのトークも、不思議なケミストリーが起きた。
いろいろとあったが、自分が少しずつ蒔いた種を収穫した時期だったような気がする。
自分は未来の社会への明確なビジョンがある。 そこへ向けてただ進んでいるだけだ。
自分は人を説得することはしない。 共鳴する人たちが、自然に集っていけばいい。 ゆるやかな関係性をこそ、目指している。 ベタベタではなく、パサパサではない、生命や魂が躍動するような関係性を。
ということで、年末は大学で当直をしています。 静かな病棟です。 2017年が静かに眠りにつくような時間に、もう永遠に訪れない2017年を思うと、逆に時の永遠性を感じてしまうのは生命のバランスとしての働きなのかもしれません。
今年もお世話になりました。 また来年もよろしくお願いします。 お互い、素晴らしい年にしましょう。
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