イキウメ『図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの』 @ シアターイースト
イキウメ『図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの』 @ シアターイースト(東京芸術劇場) を見てきた。やっぱりとんでもなく面白かった!
哲学、心理学、ユーモア、神話・・そういうものを演劇という手法で包み込んだような作品。
あらゆるところで、自分自身に突き刺さるような余白が常に用意されている。演劇を見ているようで、結局は自分自身の日常や、自分自身を見ているかのような循環的な世界観はほんとうにすごい。
今回は「感情、衝動、思い出」についての3つの短篇集。
一つ目は死と情報、AIに関しての話。 そして、思い出、記憶、イメージ、想起など。 二つ目は衝動、因果論、合理化、縁起やシンクロニシティー、、、など 三つ目は共感、自と他、不安、、、、など。
それぞれの短編は人間の奥深くにある「何か」、文字で言えば「?」「!」でしか表現できないものを描いている。 そして、3篇目が1篇目と循環的につながっているようにも見える。 この劇場の観客席自体が箱の中である巨大な隠喩のように。
舞台の様子や情景を、光の当て方だけで表現しくしているのが本当にすごいと思った。 まさに人間の光と影、日向と日陰、そうしたものを扱っているからだろうか。 強い光が当たった時に浮き出る強い影、その両者のバランスで全体は変化しているといわんばかりに。
あとで思い返すと、結果としてそれぞれが循環的な関係の中で連鎖しているように思えるのがすごいところだ。
ユーモアで笑える部分も多い。 どっと自然に笑いが起こるのも、イキウメという舞台とお客さんとの強い信頼関係が底辺に流れているからだろう。
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見終わって、ひとりになる。いろいろと思い出され、自然に考えさせられる。
たとえば、未来の社会の話になると、たいていが科学技術、テクノロジーの話になり、AIの脅威や可能性の話ばかりになる。 ただ、本当にそういう未来はわたしたちが選んだものなのだろうか? 自分自身が、決意して選んだものなのだろうか?
なんとなく、集団幻想で流れている方向に、自分自身で合理化しているだけなんではないだろうか。 この舞台を見て、そうした問いをつきつけられたような気がしたのも不思議だ。
演出家の前川知大さんは、神話的世界を代の言葉で表現している稀有な方。
村上春樹さんは小説世界だから一気に広がるけど、前川さんは舞台だからそこで体験した人にしかわからない。
でも。 自分は春樹さんと同程度の質をもって、演劇という形式で深い世界を表現している、世界にも類を見ない、すんごい深さをもった表現者だと、お世辞じゃなく思います。
ぜひいちど、体感しに行ってください!
演劇は、小説や映画と違い、ほんとうにこの時にいかないと、永遠に体験できないので、ぜひ!! 当日券も出ているみたいです!
<補足> →●映画「散歩する侵略者」(September 4, 2017) →●Brutus No. 854 人間関係 573 写真/篠山紀信『衝撃の余韻』稲葉俊郎、前川知大(September 1, 2017)
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図書館的人生、第四巻は意識の中の魔物、「感情、衝動、思い出」についての短篇集。
誰かの何気ない一言で湧き上がってきた感情。 突然、心の中に火花のように現れては消えていく衝動。 見知らぬ人の芳香や懐かしい音楽が、否応なしに引きずり出す思い出。 それらはふとしたきっかけで襲ってくる。意志とは無関係に。 無視することはできても、無かったことにはできない。 私達の日常は平穏に見えて、心の中は様々なものに襲われている。
感情、衝動、思い出。襲ってくるもの。 自由意志なんて本当にあるのか、不安になってくる_。
図書館的人生、第四巻は意識の中の魔物、「感情、衝動、思い出」についての短篇集です。
日程2018年05月15日 (火) ~2018年06月03日 (日) 会場シアターイースト 作・演出前川知大 出演浜田信也 安井順平 盛 隆二 森下 創 大窪人衛 / 小野ゆり子 清水葉月 田村健太郎 千葉雅子
http://www.geigeki.jp/performance/theater171/
P.S.
3月29日に同じ池袋の芸術劇場に、「タイムライン」を見に行った時、このイキウメ公演のポスターが貼ってあり、まるで自分の行動が予言されているようで驚いたものです。笑