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「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ(Where To Invade Next)」(2015年)

「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ(Where To Invade Next(2015年)」を見た。

ここ最近で見たドキュメンタリーの中で、もっとも啓発される内容だった!

マイケル・ムーアの最高傑作!と言っても過言ではないほど、未来への希望が持てる素晴らしい作品!

タイトルが洒落が効いているのだが、それがうまく伝わらなかったのか、2015年の作品だがあまり話題にならなかった(ような気がする)。

上映から3年後、今になってやっと見たが、すごく面白く希望に満ちた映画で、多くの人に見てほしいな、と思う内容だった。

あらゆる国の優れた文化をアメリカに持ち帰り、文化的な意味でアメリカが世界を制覇するのだ、という、ある意味で皮肉が効いたタイトルが、「Where To Invade Next」に込められている。

この映画で紹介されている色々な国の進んだシステムは本当に驚いた。

映像で、実際にその中で生きているひとたちの生の声を聞くのは強い説得力がある。

●労働環境@イタリア

→有給休暇が1-2か月は当たり前。自分の人生を楽しみ、ゆっくり休暇をとらないと質のいい仕事なんてできないでしょ?というのが当たり前になっている。

ランチタイムを大切にしていて、どの会社も2時間くらいとる。多くの人は家に帰り、家族での食事の時間を大切にしている。素晴らしいなぁ。こういう仕事ぶりが日本でも当たり前になればいいのに。

●学校給食@フランス

→食育の重要性。子どもに質の高いものを食べさせるのは当然であり、国民の義務、責任でるという高い意識。

料理の配膳も大人がするので(給食当番ではなく)、サーブされた食事をどう食べるのか、フォークやナイフは? そうしたテーブルマナーも同時に学ぶ給食であり、食育。

日本にも和食があり、和菓子があり、懐石があり、土地や風土に根付いた食文化がある。もちろん、食のマナーもある。そうした自国の日本文化を知らずして、世界へと出ていくことはできない。日本食を食べ、マナーを学び、文化を学び、四季や旬を学ぶ。そうしたことを子どもたちに学ばせることが大人の責任である。こうした考えが当たり前に根付き始めて実践されているフランスから、学ぶ。

●教育・学校制度@フィンランド

→宿題もなくし、統一テストもなくした。

それぞれが本当に好きなことを追求して、子供の夢を大切にする教育。

学校の勉強がすべてではなく、自分自身で発見していかないといけないということを学校自体が体現している。

よい教育をよい教育を、、という考えが強すぎると、時には一面的な洗脳教育になってしまう。なぜなら、土台になる時代自体がどんどんと変化し続けているから。教育のそうした二面性をよく理解した上で、押し付けと押しつけではない自由さとのバランスは、時代とともに常に考えていかないといけない。

人生には答えはない。問いだけがある。

従来のように共通テスト、という形で、共通の解答を求める時代は過去のものになりつつある。官僚システムを維持するための過去のものだ。

時代は急速なスピードで変化し続けているので、むしろ変化に対応できる表面の柔軟さと、強い芯とが必要とされる。

●教育・学費@スロベニア

→大学の学費は無料。外国からの留学生すら無料。

教育は公のものであり、誰にでも学ぶ権利があり、当然である。

インターネットの時代により、教育の形は変化している。

頭での情報自体は、ネット空間で検索したら得ることができる。ある意味で共通の図書館が構築された。

だからこそ、次は体験としての教育が必要になる。

浅い知識ではなく、深く染み込む体験知としての教育。

●歴史教育@ドイツ

→ドイツで過去にあった失敗を正しく教える。

祖先の罪はちゃんと認めて、その上で未来を考えていこうという前向きな姿勢。

アメリカでも、黒人差別や虐殺、奴隷制度、そうしたことを嘘つかずちゃんと教えるべきだ、という皮肉も映像の中に込められていた。

そうした色々な失敗と反省を受け止めた上で次の時代に進んでいかないと、同じ間違いを繰り返すのだから。

●ドラッグ問題@ポルトガル

→いわゆるドラッグとされるものは合法化されている。

なぜなら、ドラッグ問題の本質は依存症にこそあると考えられているから、ゲームやネットの依存症と同じ問題なのだとして、隠さずにオープンにすることで使用者の責任にゆだねている。

合法化したら、むしろドラッグの使用者が減ったらしい。

確かに、日本でもシンナーは誰でも購入できるけど、ちまたにシンナー中毒者にあふれているということはないし。

ただ、医療費もタダにすることで、治療は誰もが平等に受けられる、という考えも同時に導入したことが成功のカギではないか、と、現地の人は言っていた。

こういう現象は本当に面白いです。禁止にするからしたくなる人がいる。オープンにしてしまうと、人間は意外に興味を失うのかもしれない。最終的に自分の体に跳ね返ってくることなのだから。

●刑務所@ノルウェー

→この映像はかなり驚いた。

受刑者は哲学や美術、音楽などに触れ、文化の力で再教育をする機会が大きく与えられている。

すべて個室(というか一軒の家!)が与えられていて、鍵も受刑者しか持たない。看守の暴力や、看守が家に勝手に入ってくることはありえない。包丁も料理するためにあるが、誰も包丁で自殺したり、他社に危害を与えたりしない。犯罪者であろうとも、人間の良心への信頼をベースに、制度をつくっている。

被害にあった遺族の方のインタビューもあった。

復讐は絶対に望まないと。相手へ死刑を求刑することは、相手と同じレベルに落ちることだと発言していた。もちろん、その表情には深い悲しみもあったが、それ以上に深い慈悲の心を感じた。

そうした刑務所のつくりかたにより、殺人事件の発生率はノルウェーが世界一低いとのことは、二重の驚きだ。にわとりが先か、卵がさきか・・・。

犯罪を犯した人は、どこかで教育を間違えてしまったと考えられている。そして、それは社会全体の問題である。だからこそ、社会の中でもう一度最初からら教育をやり直す、という考え方。

実際の映像を見ると、本当に驚く。もちろん、死刑もない。ちなみに、先進7カ国(G7)の中で死刑制度があるのは日本と米国だけで、全世界で3分の2以上の国が死刑を廃止したという事実は知っておく必要がある。

●女性の社会進出@チェニジア、アイスランド

チェニジアでは、女性たちが権利を獲得するために正当に闘った歴史がある。

それは上から与えられたものではなく、女性が正式な手続きを経て訴え続け、勝ち取ったものである、と。

アイスランドの例も素晴らしかった。女性の大統領が出ている。

アイスランドでは、女性の銀行家だけで構成された銀行だけが唯一つぶれなかった、と。

女性は<わたしたちの利益>を考え、男性は<わたしの利益>を考える傾向にある、との発言は深い。

女性経営者たちの誇りに満ちた顔と、同胞をいつくしむ態度が印象的だった。

アメリカは、なぜ同じ国民の中でここまで富の格差が起きていて、同胞である仲間が苦しんでいるのを見て、なぜなんとも思わないのか、と。

 

とまあ、思い出しただけでもたくさん学ぶことがあった。

あと、盲点として気づいたこと。

この中には、まだ理想的な医療モデルがない、ということ!

マイケル・ムーア監督も、おそらく世界中探したのだろうが、まだ医療・福祉に関する理想を実現している国がない、と思ったのだろう。

実際、マイケル・ムーア監督の『シッコ SiCKO』(2007年)という映画は、アメリカの医療問題をテーマとしたドキュメンタリーで、ほんとうにおもしろい映画だった。きっと、彼もこの次を追い続けているはずだ、と思う。

日本という国のシステムも、もちろん不完全だ。

仕事の仕方、仕事の休み、教育の問題、女性の社会進出、刑や罰の捉え方・・・、そもそも、国というシステムはもっともっとよくできるのだ、という根本的なことなどなど。

日本も多くのことを学び、よりよくしていく必要がある。 そして、それはできる。

実際に、今この瞬間にも実現した国が数多くあり、空気のように当たり前になって次のステップに進んでいる国が、世界中には数多くあった、ということには驚いた。そして、同時に希望を感じた。

個人だけではなく全体としてよりよい社会になっていくことは決して夢物語でもなんでもなく、世界には(部分的にかもしれないけれど)成し遂げている多くの国がある!!

日本のすべてのひとに見てほしい映画! きっと色々とInspireされるはず。希望を感じた。勇気をもらったー。

是非見てほしいです。 そして、こういう映画を日本でもだれか作ってほしいーーー!!

●映画『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』予告編

●映画『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』本編映像”ノルウェーの刑務所”

●映画『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』本編映像”フレンチフライとコーラ”

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