分からないことを考え続けること
書家の紫舟さんとの対談@六本木アカデミーヒルズ、話していて本当に面白かった・・。
東洋と西洋の美の違い、価値観の違い、書のこと、アートのこと、立体のこと、アートと医療のこと、、、色々と話題が豊かで。
紫舟さんが魅力的だな、素敵だな、と思ったのは、彼女は日々哲学している、ということだ。 つまり、些細なことでも自分で観察し、考え、自分自身の解答を出している。こうした日々の作業の果てに、彼女なりの書の世界がある。
「書の何にひかれるのか」、「なぜ西洋では書が理解されにくいのか」、「なぜ書は一筆書きが禁止されているのか」、「西洋のアートに負けない書とは何か」・・、、 こうした問いに、それっぽい解答を与えることは容易い。
ただ、本気でこうした問いを自問自答し始めると、人間に関するかなり深い洞察を必要とする。
問いが新たな問いを生み、波紋のように広がる問いに対峙しないと収拾がつかなくなる。
何か解答を得ることが目的というよりも、問いを立てることで本質から離れないようにしているのではないかと思う。
かくいう自分も、子供のころ、「なぜ人は死ぬのだろう」、「なぜ寝ないといけないんだろう」、「寝て起きたとき、これがあの世(死後)ではないとどうやってわかるのだろう」、、、と、自分なりに切実な問いにとらえられ、その問いに答えようとし続けた結果、「いのちを呼びさますもの」という著作にまで結実した。(実はそうなんですよ)
考えれば考えるほど、この世は分からないことばかりだし、そもそもが一生付き合っていく自分自身の心も体も、わからないことばかりだ。
自分自身が未知で謎で迷宮だ。
分からないことを考え続けることが、胆力のようなものを静かに育んでいるような気さえする。矛盾に耐える力こそ、生きる力そのものだ。
いづれにせよ、紫舟さんはプロの書家であるとか、海外でも活躍されているとか、そうしたことを離れて、ひとりの人間としてとても魅力的な人だった。
話しているだけでいろいろと勇気をいただいた気がしたし、自分の進む道は間違っていない、と、変な確信さえいただいた。
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そういえば、自分も、小学生の時に書道教室に通っていた。西澤先生。自宅の一部を改装し、奥にはいつも不愛想な先生のお父さんがいて、西澤先生は書道教室で子供と遊ぶことが本当に生きがいで、楽しそうだった。
自分は、書道が目的ではなく、ただ筆と墨で遊ぶことが目的で、キン肉マンを筆で書いたり落書きばかりして怒られていたので一向に上達しなかった。とめ、はね、はらい・・・など、いまだに書道用語?が、記憶の奥底に眠っている。
いま、文字を「書く」時代から「打つ」時代へと大きく変化した(いまもまさに文字を「打っている」)。 そんな今だからこそ、改めて文字を書くという原点、書道もやってみたいと思った記念日でもあった。(さっそく書道の本も買ったし、100円ショップで墨と筆も買った。影響受けやすい自分。)
紫舟さんありがとうございました!今度書道もおしえてください!
■2019/3/5(Tue):イデア -時代を切り開く者たちの良心-@アカデミーヒルズ(六本木ヒルズ森タワー49階)(19:15-20:45) 第4回ゲスト:紫舟(書家)【ファシリテーター】稲葉 俊郎 (医師)(アカデミーヒルズライブラリーメンバー枠)
●紫 舟(シシュー) 書家/アーティスト
幼少より書や日本舞踊などの教養を身につけた後、奈良・京都で幅広く本物の和や伝統美の研鑽を積む。
日本では天皇皇后両陛下が御成りになり紫舟展を御覧。
世界ではフランス・ルーヴル美術館地下会場、フランス国民美術協会展において金賞と審査員賞金賞をダブル受賞。イタリア・ミラノ国際万博 日本館の作品を担当、金賞受賞。 文字が内包する感情や理を表現するその作品は、世界へ日本の文化や思想を発信し、書の領域を超えた現代アートと評されている。 http://www.e-sisyu.com