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異なる世界

難しい治療をする前には、1週間くらい前から意識と心身を整えていくので、なんだか他のひとたちと別世界の異次元に入って行くような気持ちが、いつもする。

周囲は日常を送っている。ただ、自分は違う意識の世界へ入って行く。日常や世間とは全然関係ない世界。

テレビのゴシップ番組がヤーヤー言っている。誰かと誰かがくっついたとか、離れたとか、ヤンヤヤンヤ言っている。それは自分の人生とは関係がない。たとえ革命が起きようと、それはそれ、自分は自分だ。自分のしたいことには波風が立たない。

治療は、ミスしないように、完璧に、丁寧に。イメージを大切にして、理想的なイメージが絵巻物のように展開されるように。すべての可能性を想定しながら。雑にならないように、意識が濁り、判断が鈍らないように。

もし想定外のときが起きても、すぐに心に別のゾーンを開いて迅速に異なる展開へ対応できるよう、心の中に余白としてのスペースをあけておく。

こういうことを続けていると、治療後にもどっと疲れる。おして、何の因果かこういう世界に足を踏み込んだのか、と思う。

が、これもまた人生という壮大な絵巻物のワンシーン、ワンテイクかと思うと、すべては何かの伏線なのかもしれない。人生を卒業したときにはじめて答え合わせが行われるように。

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