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映画『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』

アーティスト、ヨーゼフ・ボイスの映画を観た。

『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』 監督 アンドレス・ファイエル 2017年 ドイツ

彼一流の、混乱と撹乱と錯乱とアジテーション、そこに強い理性とがブレンドされた幻術にかかりつつ、かつ、確固としたメッセージの核を受け取った気がする。いま、自分に機が熟しているから受け取れたのかもしれない。

ちょうどいま、山本七平の「空気の研究」を再読しているが、日本を支配する「空気」というもの。

空気を読みなさいよ、その場の空気ではさすがにそんなことは言えませんよ、、という日本を支配する「空気」。

その謎の力の本質を自分なりに解明していくべきであることと、ボイスが現代に投げかけた問いとが、かなり呼応していると思った。わたしたちが場の倫理だけではなく、個の倫理を確立していくためにも。

芸術は、勇気という、かけがえのないものを人々に与え続けていると思う。

そのことは芸術の知的理解や芸術の資本的価値なんかとは階層の違う、より根本的でかつ人間の尊厳にかかわることでもある。

彼は、挑発することで人々から勇気や自由を引きずり出そうとしたのだ。

 

解説 第2次世界大戦後のドイツで「社会を彫刻する」ことを掲げて活動した芸術家ヨーゼフ・ボイスの人生を追ったドキュメンタリー。前衛芸術運動「フルクサス」にも参加し、脂やフェルトを使った彫刻やパフォーマンスなどを発表したボイス。その作品は美術館を飛び出し、観客と対話することで、誰もが社会の形成のプロセスに加わるべきだと訴えかける。既存の芸術概念を拡張するボイスの思想は、世界中にセンセーションを巻き起こし、バンクシーを始めとする現在のアーティストにも受け継がれている。本作では、膨大な資料映像や新たに撮影された関係者へのインタビュー映像から、ボイスの芸術に迫っていくほか、第2次世界大戦で戦闘機が墜落し、死に直面する経験のあるボイスが、その時に受けた大きな傷が、彼自身の作品の核になっているという、知られざる側面も明らかにする。

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