新しい関係性を結び直す
令和元年の初日には、銀座ソニーパークで高木正勝さんと対談、そして正勝さんのピアノを聞いた。
新時代の素晴らしい幕開けだった。
みなさんは、どのように過ごされましたか?
■■■2019/4/20-5/24:『#007 eatrip city creatures』@Ginza Sony Park(東京都中央区銀座5-3-1)
■2019/5/1(Wed)(12:00-14:00):eatrip voice & live「高木正勝 × 稲葉俊郎」:高木正勝(音楽家)/ 稲葉俊郎(医師・医学博士)/ 野村友里(聞き手)@PARK B2/地下2階(Ginza Sony Park)
■2019/5/8(Wed)(18:30-19:30):eatrip voice「稲葉俊郎 × 大友良英」:稲葉俊郎(医師・医学博士)× 大友良英(音楽家)@PARK B2/地下2階(Ginza Sony Park)
自然や環境、いろいろな生き物と、新しい関係性を結び直すこと。 自然界で唯一エモーショナルな生き物である人類は、自然や生命の脅威に、驚き、畏れ、怖がり、感動し、それでもなんとか生き延びてきた。 自然の中では圧倒的な弱者である人間は、その弱さゆえに、人と集い、共に力を合わせることで、なんとか生き延びてきた。
人が集うと、エモーショナルな動きを原動力とする人同士はぶつかり合うこともあり、バラバラになることもある。だからこそ、わたしたちは歌い、踊り、食卓を囲み、バラバラになる心をより合わせるようにして、新しい美を再創造してきた。その新しい美を中心に据えながら、常に移りゆく自然とも新しい関係性を再創造し続けながら、ここまでなんとか生き延びてきた。
技術や道具を人間が生み出したのは、新たに獲得した時間を、個を深める時間に使うためだったのではないかと思う。個を深める時間を疎かにすると、大きな全体主義的な、個を消滅させるような濁流に、簡単に飲み込まれてしまう。
個人個人の生活し生きている場所で、完全さや完璧性を求めて自己完結していくのではなく、全体性をこそ求め、個人個人が全体性を回復して取り戻していけば、こどものころの全体性とともに生きた聖地を奪還しさえすれば、個人と場とが、有機的な関係性を取り戻すことができるだろう。自然との新しい関係性や、芸術や生活や生命との新しい関係性も同じ。
運命の糸を編み込むように、個人と場や環境とは、常に新しい関係性というタペストリーを編み込み続ける必要があるのだと思う。
わたしたちを取り巻く自然や時代に対して、消費者ではなく、お客さんでもない。同じ場や空間を作り出している共同創造者なのだ。
わたしもあなたも、だれもが決して仲間はずれにならない社会を。
過去も未来も、このかけがえのない今というこの瞬間の積み重ねでしかなく。わたしたちは今この瞬間以外にはどこにもいることができない。
過去を回想し追憶することも、いまこのわたしと、いまこのわたしたちのため。
未来を期待し絶望することも、いまこのわたしと、いまこのわたしたちのため。
いまこの瞬間を常に生かし続けている命の力は、常にわたしたちの味方として、ぴたりとあわさりながら鼓動を打ち続けている。
心臓の一拍一拍の鼓動は、この瞬間に戻り続けることを伝えているようでもあり、一歩一歩を大切にして前に歩いていくことを告げているようでもあり、一歩一歩の足を踏み外さないように足の指先の向かう方向を確かめるようシグナルを送っているようでもある。
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対談のあと、暗闇の中から高木正勝さんのピアノがはじまる。正勝さんの華奢な身体から、生き物のようなエナジーが溢れ出した。その背中をじっと見つめながら、音の場に身を委ねた。
燃える生命が沸騰し溢れ出すような場面もあれば、静かな波一つ立たない湖面の上を鳥や生き物が飛び交い、湖面を一つ一つの波紋で満たしていくような情景もあった。
ソニーパークに集い、音の場を支えた参加者は、それぞれがいろいろなイメージを喚起され、心が共振していたように感じられた。
令和の新しい年明けにふさわしい正勝さんの歓喜と躍動のピアノは、わたしたちが自然と新しい関係性を結び直し、いまこの瞬間を大切にして生きていくことを肩を組み祝福しているようだった。
正勝さんのピアノとの関係性、自然や場や環境との関係性、そのあり方は多くの示唆や霊感に満ちた佇まいで、場が満ちていた。