「吉左衞門X 深見陶治×十五代吉左衞門・樂直入」@佐川美術館
直感的に行った琵琶湖のほとり。 雲がきれいだったなぁ。
雲同士が雲語で会話しているようで。
琵琶湖のほとりには、素敵な佐川美術館がある。 佐川美術館では吉左衞門Xとして「深見陶治×十五代吉左衞門・樂直入」が開催されていた。
樂直入(らくじきにゅう)さんは、自分の中で陶芸界最大のスターだ。 先日、ご長男さんの16代吉左衞門さんへ名前が次代へと継承され(大嘗祭で天皇霊が移されていくように)、直入(じきにゅう)の名前は15代吉左衞門の隠居名で、今回の展示は隠居後に初めての展示だった。
自分が陶芸の器を見て、思わず立ち止まり、金縛りのように見つめてしまった最初の体験は15代吉左衞門さんの作品で、それ以降は常に追っているほど、大好きだ。
器を見ているだけで、作者の精神世界に深く入っていける。
隠居後の樂直入(らくじきにゅう)さんの茶入れは、すべての色が脱落し、大地そのものの混沌へと戻ろうとするかのような、迫力ある茶入れで、感動だった。
20年くらい前からの茶入れの変遷を見ていると、老いと創造に関して、大いに学ぶことがあった。
深見陶治(ふかみすえはる)さんの作品もすさまじいもので、青白磁の抽象作品。
青磁でもあり白磁でもある青白磁は、光の当たり方次第で、青空や深海の色のように青が白へと無限に変化していく。
形はアラビア文字のような月の満ち欠けのような古代の武具のような、何と定義できないが、色々なイメージが湧いてくる不思議な造形。
大地そのものような茶入れと、深見さんの青白磁との対比が、女性原理と男性原理のように緊張関係と融和関係を空間にまで染み込ませていて(そもそもこの展示室自体が素晴らしく)、作品を見ているだけで瞑想のような深い体験をさせていただいた。
佐川美術館で、水と光との共演に見とれていると、自然がこうして日々演出している自然美の全体生に気づく目を開くため、その準備運動の為にも人間が創る芸術活動が一役買っているのぁもしれないなぁ、と思った。
芸術作品と一対一で対峙することで、私たちの目はさらに奥深くまで開かれ、開示された自然の美をより深く受け取ることができるのではないか、と。
吉左衞門X 深見陶治×十五代吉左衞門・樂直入 2019年10月01日(火)~2020年03月29日(日)
鋳込み技法による青白磁・立体作品で知られる深見陶治(ふかみすえはる)。樂焼による焼貫茶入を提示する樂直入(らくじきにゅう)。伝統の中にも常に新しさを追求し続ける両者が競合します。世界最大の大きさに挑戦する深見氏に対し最小世界を対峙させる樂氏。両者は、工芸の枠組みを脱し彫刻的な造形へとみごとに昇華させています。
※ 直入は15代吉左衞門の隠居名、本展は隠居後初めての展観となります