「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」@東京国立博物館
東京国立博物館に「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」を見に行く。抽象度の高さでは群を抜く内藤礼さん。緻密で繊細で、それでいて神聖幾何学のように空間をとらえ、鑑賞者自体も作品の一部になるかのような世界観。
礼さんの詩的言語。
母型。世界に秘密を送り返す。枝。石。死者のための机。鈴。窓。リフレインするかのように、世界に秘密を送り返す。鏡。
「ことば」を手がかりとして、夢を見るようにイメージ世界を深くして、礼さんとシンクロするように。
展示タイトルに導かれるように、受精卵や形以前の状態。天と地が交わり、つながり、創発されるなにものか。鑑賞者と礼さん、古代の精神世界。
イメージの欠片をつなぎあわせて、鏡の向こう側に旅するように。イメージの交換は交歓。巨大な心の空間を旅するイニシエーションの旅へ。
抽象度の高い空間作品は考えずに感じ続けるしかなく、ただただじっと目を凝らし、獣のように気配を感じ続ける。すると、大きなものには微かな小さきものがペアとなっていて、小さい世界の紡ぎ出すつながり合いが感じられてくる。小さきものの声に耳を澄ます。
「小さなメッセージを見落とさないように」
と、礼さんが耳もとで囁いている気がした。1Q84のリトルピープルのように。神聖な斎場(ゆにわ)のような空間。
ちなみに。
私がベスト美術館を聞かれると、必ず、豊島テシマにある内藤礼さんの豊島美術館と答えます。大きなものが力を持ち跋扈する現代で、か弱気ものが持つ時空を超えた強さをこそ、礼さんは伝えようとしているように思います。
常設展との関わりをうまく使った素晴らしい展示でした。
常設展にも自然に巡回して、神や仏、土偶や埴輪とも交歓する。
母型は全体性をこそ。
2024年の山形ビエンナーレは蔵王温泉。
蔵王権現と、ここでもお会いし、ご挨拶させてもらった。
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6月25日(火)~9月23日(月・休)
「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」
東京国立博物館 平成館
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